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【感想】映画「ドラえもん 新・のび太の日本誕生」

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先日見てきました、今年のドラえもんの映画「新・のび太の日本誕生」。ご存じの通り、1989年に公開された「のび太の日本誕生」の27年ぶりリメイク作です。

基本的なストーリー構成は原作の漫画(原作)及び旧映画と同じですが、「後半の展開が大きく変更」されてより見応えのある内容となっているのと、また「新たな描写の追加」で物語に深みを与えており、それら追加要素を加わって「旧映画をパワーアップさせた内容」と言えると思います。

興行成績もそれに答えるよう、公開から2週連続で映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)1位、動員数約41万5200人、興行収入約4億8500万円と好調となっています。
<映画興行成績>「映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生」がV2 (Yahooニュース)

映画の見所

核心的な記述は避けますが、それでもネタバレが含まれるかも。詳細は反転してみてください。


○ストーリー後半の展開が大きく変更
前述のよう、ストーリー展開は基本的には原作・旧映画と同じですが、終盤「ギガゾンビを倒す」シーンは大きく異なります。

原作・旧作ではドラえもん達は洞窟内に閉じ込められ、駆け付けたタイムパトロールによって救出&ギガゾンビ逮捕となりますが、本リメイク版はタイムパトロールが駆け付けるのは本当に最後で、「ギガゾンビをドラえもん達が直接倒す」という熱い展開になっています。

対決シーンは迫力のある描写とうまい台詞回しでかなり見応えのある展開。またこの時、原作・旧作では中盤から殆ど登場(活躍)しなかった『ククル』もギガゾンビとの闘いに参加・大活躍するようになっていて(※1)、ゲストキャラクターの役割をうまく使っている(※2)と思います。

※1 ギガゾンビ対決のシーンでは(原作・旧作になかった)「時空空間を乱す装置」があり、それを作動させようとしたところククルが装置を破壊するため捨て身の覚悟で活躍する。

※2 ククルが昔飼っていた狼のペットの話と、それで持っている「犬笛」(原作・旧作には登場しない)→終盤のび太が雪山で遭難した時、薄れゆく意識の中ククルから貰った犬笛を吹き、それで3匹のペット「ペガ」・「グリ」・「ドラコ」が駆け付け、のび太が助かる(上記の展開の変更もあり、タイムパトロールがのび太に呼び出しボタンを渡す展開はない)。
 ククルが「村のみんなでぬかるみに追い込んで、巨大なマンモスを倒した」→「マンモス型ロボット」とのシーンでのび太がこの事を思い出し、かけると周りが水みたいになる道具「ドンブラ粉」を使う。なお、ドンブラ粉もストーリーの最初に何気なく描写があり、これら伏線の回収の仕方が素晴らしい。

原作・旧映画では「ドラえもん達が直接動かない」展開で解決していて、正直グダグダなような気もしていたので、ここを変えたのは目を付け所が素晴らしいかと。

なお、ギガゾンビ対ドラえもん最初の対決にて、負けたドラえもんの台詞「残念、1世紀負けたか」(ギガゾンビがドラえもんの22世紀製より最新の23世紀製の武器を使っていたため)は原作にはあるものの旧映画ではカットされましたが、本リメイク作では原作通り使われています。これも前述の対決シーンの伏線の一部になっています(※3)。

※3 これがギガゾンビとの2回目の対決の時、ドラえもんの「一世紀の違いなんて、みんながいればなんてことないぞ!」に繋がる。
 ドラえもんはククルが持っていた「本物の石槍を投げつけ、ギガゾンビを倒した(未来の道具ではない石槍はギガゾンビの力では対応できなかった)。その時の台詞「本物の歴史が(ギガゾンビが作ろうとしている)偽物の歴史に勝てるわけがない!」というのも見事。


○のび太のパパ・ママの心情を表す展開が追加
個人的にはこの追加要素がかなり好印象。原作・旧作では7万年前の日本に行くきっかけとなったのび太の「家出」は、文字通りストーリーのきっかけにしか過ぎなかったのですが、本作ではそれに対するのび太のママ、そしてパパの心情の描写が追加(※4)されています。

※4 「家出する」と言って出て行ったのび太を「勝手なことを」半分怒り・半分心配するママに対し、パパは(ドラえもんが家出するきっかけにもなった)部長から預かったハムスターを籠から取り出し、「ずっと檻の中じゃ息が詰まるよなぁ」と呟く(ママにのび太の気持ちもと諭している)。
 その後、のび太が一端家に帰ってきた時、ママは「こんな時間までどこに言ってたの!」と怒るものの、「早くご飯食べなさい」と心配かけたことだけ怒ってのび太の心情を理解するような描写がある。

これによってメインである「冒険」の他に、子供の気持ちと親の気持ちが明確に描かれ、メッセージ製の強いものになっているかと。また子供が親や今の生活の有り難さに気付くような描写(※5)も含まれています。

※5 ククル達の部族が村を作るシーンで、ジャイアン・スネ夫・しずかが手伝うシーンで「昔は大変だったんだな」と言うシーンがある。


○のび太とククルの友情の描写が明確になり、「ペガ」・「グリ」・「ドラコ」の別れのシーンがより感動的に
上記のようククルが終盤一緒に活躍したことと、これまでの描写の伏線で、のび太とククルに芽生えた友情を強調させています(※6)。また終盤、「ペガ」・「グリ」・「ドラコ」の別れのシーンでは原作・旧映画版になかった台詞が新たに追加され、より感動的に。このシーンからエンディングに繋がる流れが最高です(※7)。自分もこのシーンでは堪えきれず、スクリーンが潤んでしまいました。

※6 物語の序盤にも、心配して声をかけたのび太に対しぶっきらぼうに答えるククル、のび太はムッとするものの黙って毛布を置いていくなど優しさを表す描写がある。

※7 新たな台詞はタイムパトロールに1匹1匹の特徴を伝えるものに。また最後のび太が「元気でね、僕も頑張るからね」という台詞がありますが、その言葉通り現代に戻った後、(家出のきっかけになった)「0点のテスト」の問題を徹夜で解き直し、疲れて寝ている所にママがやってくるシーンで映画は終わります。
 エンドロールでは、ジャイアンは店の配達を、スネ夫は家で家庭教師による勉強を、しずかはピアノの発表会を(これらはのび太と同じく、それぞれ家出のきっかけとなった出来事)、それぞれ頑張る様子が描かれている。


その他細かい変更点として、登場する野生動物で毛サイが野牛に、ワニがオオサンショウウオに変更(7万年前にワニがいた証拠がないため、ただし毛サイは同年代にいたと考えられている)。

またドラえもんが(時空乱流による)神隠しを語るシーンで、神隠しの事例を語るシーンはカット(なお、このシーンはかなり恐怖演出が強く、「ドラえもんにおけるトラウマ(怖い)シーン」としても有名)。取り上げられている神隠しの事例は、現代においては誇張や創作を含んだ都市伝説であるとされているため。
どちらも現代の時代考証に則った変化点と言えます。

まとめ

上記の追加・変更点が本当に素晴らしく、大満足の映画でした。ドラえもんのアニメというと今でも声優の変更及び演出の変更に対する不満、映画もリメイクすることに対する不満が根強く残っていますが、そんなのが気にならなくなるくらいの良作です。


主題歌 山崎まさよし「空へ」

毎年大物・流行の歌手が主題歌に起用されるドラえもんの映画ですが、今年は山崎まさよしさんが映画のために書き下ろした曲です。別れと成長が歌詞のテーマで、映画におけるのび太の心情を表しており、エンディングの雰囲気にぴったりです。

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来年の「ドラえもん映画」予告

来年の映画製作も決まっていて、毎回恒例となりつつある「予告の映像」ですが、今回は氷の上にドラえもんが立ち、その下に建築物が広がっている様子が描かれました。詳細は不明ですが、これまでオリジナル→リメイクと交互にきているので、来年はオリジナル作と思われます。



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