今年8/8(金)に公開されたドラえもんシリーズ初の3DCG作品映画。公開前から話題となっていましたが、公開されると累計興収は公開40日目に70億円、公開76日目には80億円を突破、2014年公開作としては邦画第1位、興行成績は公開から5週連続で第1位という大ヒット作品。秦基博の歌う主題歌『ひまわりの約束』もヒットしました。
上記の成績もさながら、ドラえもんにおける感動的なストーリーで構成されているということもあって、ドラえもん好きの自分としては是非とも見に行きたかったのですが、当時他の予定でドタバタしていたのもあって行く機会を作れず時間が経ってしまい、来年2月のDVD発売(レンタル)を待つしかないかなぁと思っていたら、なんとお台場メディアシネマージュ等一部の映画館では現在も公開していると知り、今更ながら見ることができました。全国数ヶ所とはいえ4ヶ月以上経過後も公開しているのも、大ヒット作の証ですね。
本作は原作にあるドラえもんのエピソードのうち、のび太とドラえもんとの出会い、のび太と静香の恋愛、そしてドラえもんとの別れに関するストーリーを一つにまとめて構成されたものになっています。
※以下、()内は原作漫画のタイトル。
ドラえもんとの出会い
映画は勉強も運動もダメな少年「のび太」の1日の様子からスタート。ある日未来から自分の孫の孫(玄孫)である「セワシ」と子守ロボット「ドラえもん」がやってきて、今後不幸な人生を送ることになるのび太の運命を変えるため、ドラえもんがのび太を幸せに導く手助けをすると話す(「未来の国からはるばると」)。ここにおいて映画オリジナルの設定として、ドラえもんは「こんなダメな奴の面倒なんて見きれない」とのび太と共に生活するのに乗り気ではなかったため「のび太を幸せにするまで未来に帰れないプログラムをセットされ、プログラムに違反する(のび太と生活するのを拒否する言動など)行為をすると体内に電流が流れるため、しぶしぶ生活を始める」というのがあります。
この設定は原作とは大きくかけ離れており、「セワシにとっても大切な存在であるドラえもんを”命令を聞かせる道具”のような扱いをするわけがない」と原作ファンを中心に物議を醸しました。ただ、この設定は本映画上にとってはストーリーをうまく運ぶ、まとめるために一躍買っているという役割があります。こうして不本意ではあるものの一緒に生活をすることになるドラえもんとのび太。ドラえもんはまずのび太に「タケコプター」を与え、一緒に空を飛びます。のび太の不器用さに呆れながらも、いつの間にか笑顔で共に空を飛ぶドラえもん。「いつの間にか、誰とでも仲良くなれる」、そんな子供特有の無邪気さが感じられるシーンです。
のび太がクラスメイトの「しずか」のことを好きだと知ったドラえもんは、のび太としずかが結婚する未来を作ることがのび太の幸せに繋がると確信。次の日から「どこでもドア」や「アンキパン」等でのび太を立派な人間にする手助けを。その他しずか、スネ夫、ジャイアン達にもいろいろなひみつ道具を出してみんなを喜ばせます。原作にある数々のエピソードがダイジェスト的に展開されるシーンです。
しずかとの恋愛
しかし、ひみつ道具の力を借りても、のび太はクラスの何でも出来る天才「出来杉」には勝てず、しずかも出来杉に惹かれていた(ようにのび太は見えた)。それを聞いたドラえもんは「未来のひみつ道具に出来ないことはない」とのび太としずかを結びつけようとします(「たまごの中のしずかちゃん」)。でもこれは原作のオチと同様失敗に終わり、出来杉の「機会に頼って君(しずか)の心を動かすのは嫌だ」という言葉にのび太もドラえもんもショック。
それ期にのび太は「自分の力だけで、次のテストでは0点以上を取る」と、なんと自ら勉強を。しかし、のび太が勉強したのは「算数」、当日のテストは「国語(漢字)」。またしてものび太は0点を取ってしまうのでした。
「やっぱり自分は何をやってもダメだ。自分と一緒になったら、しずかは苦労するのでは」とのび太はしずかと接触を避けるようになります(「しずかちゃんさようなら」)。しかし自分を懸命に助けてくれたしずかに、改めて愛情(この時点ではまだ友情)を感じ、この一件が未来に影響したのか、のび太の結婚相手が「しずか」に変わります。
なお、原作ではのび太がしずかの家訪問した時に相手をしたのはしずかの母ですが、映画では父になっています。父が直接「(のび太はしずかの事を思って)さよならと伝えてくれ」と聞くことになるため、後述の「のび太の結婚前夜」のエピソードの複線になっているとも言えます。
しずかとの結婚まで
しずかと結婚するような様子を微塵も感じられない現状にのび太は不安になり、タイムテレビで未来を見ることに。するとしずかは雪山で遭難していた。ここでのび太は大人の姿になって未来に行き、しずかを助けて格好良い活躍で結婚に至るのだろうと奮闘(「雪山のロマンス」])。このエピソードは原作ではギャグ的な扱いになっていますが、映画においてはオチ自体は一緒なものの後半の展開は大きく異なり、かつ全体における重要な要素になっています。
以下反転:
この一件でのび太としずかは婚約し、ドラえもんとのび太は最後の確認と二人の結婚式(結果的には結婚の前日)を見に行く(「のび太の結婚前夜」)。展開は原作と概ね同じで、以下細かい描写追加も。
自分の力だけではしずかを助けられないと思った(子供の)のび太は、「この出来事を今、子供の自分が覚えれば未来の自分が思い出して駆け付ける」と、可能性を信じて念じる。するとその望みが叶い、未来ののび太が雪山に駆け付け、二人は助かります。 |
この一件でのび太としずかは婚約し、ドラえもんとのび太は最後の確認と二人の結婚式(結果的には結婚の前日)を見に行く(「のび太の結婚前夜」)。展開は原作と概ね同じで、以下細かい描写追加も。
・ジャイアンの家での宴会シーンにて、出来杉もしずかの事が好きであったと発言。しずかによる出来杉を選ばなかった理由は「あなた(出来杉)は一人で何でもできるから」。 ・ジャイ子は「プロの漫画家」になっており、宴会の場に少しだけ登場。 ・ジャイアンの部屋にはステージ衣装と自身の名前が書かれたCD(レコード?)らしきものがあることから、ジャイアンはプロもしくはアマで音楽の道で活躍している(していた)可能性を想像させます。しずかの父の、ドラえもんにおける有名な台詞は本作にも登場。ただしちょっとだけ文脈が違います。
「あの青年(のび太)は確かに大きな取り柄はない。だが人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことのできる人だ。それが一番人間にとって大事なことなんだからね。」
未来が明るい物へ変わったことを確信したのび太は、「幸せ」をはっきりと感じます。
ドラえもんとの別れ
のび太の未来が「幸せ」になったことで、ドラえもんは未来へ帰らなければならないことに。原作にはありませんでしたが「プログラム上同じ時代には再度来られない、つまりもう2度とドラえもんとのび太は会えない」ことに。原作にないシーンで、ドラえもんがタケコプターで空を飛ぶのを眺めながら涙するのが印象的です。
のび太はドラえもんに安心して帰って貰うため、自分一人でいじめっ子のジャイアンに立ち向かう(「さようならドラえもん」)。
一度は未来に帰っていったドラえもん、しかし、またのび太の元に帰ってきます(「帰ってきたドラえもん」)。展開については原作と同じなので割愛しますが、最後は部屋の中で再会を喜ぶドラえもんとのび太の姿がフェードアウトして終わります。
感想
この映画を見て(ポスター、予告を見て)まず気になるのは、「ドラえもんの世界、特にキャラクターをCGで描いていることの見た目の”違和感”」であると思われ、実際自分も映画を見て最初はやはりどうもCGがしっくりきませんでした。しかし、この違和感は数分で慣れ、受け入れて見れるようになります。その上背景絵が非常にリアルに作られているため、本当に「ドラえもん、のび太がいる世界に自分もいる」気分になっていきます。
またタケコプターで空を飛ぶシーン、後半未来の世界のシーンは華麗かつメリハリのある映像展開に引き込まれ、まるでテーマパークのシアター系アトラクションのようです。
なのでCGの違和感についてはほとんど問題ないと言って良いでしょう。
ストーリーについては、各エピソードは原作と概ね同じではありますが、複数のエピソードをうまくつなぎ合わせて1つのストーリーにしてあり、また上記の「雪山のロマンス」の展開変更などもあり、うまく作られて(構成されて)いるなという印象です。それに加えて上記の「リアルなCG描写」で漫画・アニメ以上にキャラクターを間近で感じられるため、感情移入しやすかったです。
ちなみに私は「のび太の結婚前夜での、しずかと父の会話のシーン」、「さようならドラえもんの、のび太とジャイアンの対決シーン」と、「ラスト、のび太とドラえもんの再会のシーン」の計3回、堪えきれずに泣いてしまいました。
ドラえもんの世界と共に、自身の少年自体の思い出に帰れるような気分になれる、見て優しい気分になれる映画と思います。来年2月にはDVD,ブルーレイの発売、また前述のよう自分が見たお台場を含め現在もまだ公開している映画館もあるので、多くの方に見て貰いたい作品です。海外でもどんどん公開されているようで、人気はさらに拡大しそうです。